INTERVIEW百色移住インタビュー

「自分で選ぶ」ということが当たり前にできるようになった、北条での理想の暮らし

三浦哲也さん、恵美子さん

ふと思い出した一枚の写真

東京でのパティシエとしての経験、レストランがオープンさせたハワイのお菓子屋での経験、そしてフランスへ本場のマカロンを学びに行ったのち、東京・西荻窪のマカロン専門店「マカロン・エ・ショコラ」を創業から任されるなど、各地を転々としながらお菓子職人としての腕を磨いてきた三浦哲也さん。奥様との出会いもその仕事がきっかけだったそう。結婚、そしてお子さんが生まれたのをきっかけに、都会での生活や子育ての環境に疑問を持つようになった。

移住先をいろいろと模索していく中で、漠然と考えていた条件は「寒くないところ・気候が穏やかなところ」。そして神奈川県大磯町出身だった三浦さんにとってゆずれなかったのは「海に近いところ」という条件だった。その二つを加味していくと、自然と瀬戸内エリアが候補地に。そんな中で、ふと思い出したのは友人からの1枚の写真だったそうだ。それは、「旅の途中です」というメッセージに添えられていた北条の海の夕日の写真。ふとその美しさを思い出し、ここに行ってみようと、心が決まった瞬間だった。

ツアーに参加し初松山へ

それまでにも四国の徳島や香川には足を運んだことがあったそうだが、2016年4月に愛媛初上陸。「生活をリアルに描くというよりも、どんな環境かが見られればそれで良かったんです。あとは自分でもリサーチできるから」と三浦さん。大まかな生活環境を移住ツアーで見学して都内に戻ってからも、あれこれと調べたのち、松山の中心部だと東京とあまり変わらないかもしれないとの想いから、より海に近い北条エリアを選んだ。結局移住までに松山に足を運んだのは、ツアーの際と、家を契約する時の二度だけだった。
家を契約する際に困ったことは、開業予定だったため当時は無職。その状態では賃貸契約ができない不動産会社もあったそう。けれども運良く、お店、自宅共に気に入った物件を契約することができた。

郵便局でアルバイトをしながら地域を知る期間

移住してからは、開店準備を進めながら郵便局の配達員としてアルバイトをすることに。生活のためということもあったけれども、北条エリアの環境を知る上ではとても役立った。そしてその合間に企業セミナーに行ったり、お店のクラウドファンディングに挑戦したりと、慌ただしい日々を過ごし、2019年2月に念願叶ってお店をオープンさせた。
三浦さんご夫婦の城「三浦菓子店」は、マカロンをメインに焼き菓子を中心に提供。移住してから知り合った人たちとの繋がりから、地元の旬の素材を使ったものなども多数登場する。中にはわらび餅などの和菓子もあり、「洋菓子店という名前にすると窮屈に感じたので、菓子店にしました。縛りをなくして、自由に気持ちの赴くままに、作りたいものを作ってお店に並べたいから」とのこと。今後もどんどん進化していきそうだ。

3JR北条駅前のバス停の前にある「三浦菓子店」。白い壁と優しいグリーンが目印

3店内には丁寧に作られた焼き菓子たちが並ぶ。

家族中心、自分のやりたいこと中心の生活

松山に来てから最も変わったことは、時間の使い方なのだそう。「仕事の時間も、自分の時間も、家族の時間も自分で決められるから、正直オンオフという感覚がなくなりました」という哲也さん。お子さんは市内中心部の幼稚園に通っており、約30分かけてお迎えにいく必要があるため、お店は15時で閉店すると決めたのもそのひとつ。そしてもうひとつ、移住してからハマったのが釣りなのだそうだ。この取材前日も夜、ふらりと行ってきたことを教えてくれたが、ご近所で仲良くしてくれている「イエムラコーヒー」の家村さんにも、「開店準備よりも釣りに行ってた時間が多かった」と笑い話にされることもあるそうだ。今では釣り仲間も増え、充実の釣りライフを満喫している。「思い立ったらやろうというのが、人間本来のあり方のような気がしていて。それが自分には合っていると思えるし、ストレスも少ない」と笑う三浦さん。いつも何かに追われるようにあくせくしていた都会暮らしに比べて、心の余裕もできたそうだ。例えば、市内中心部へ行く際も、お天気が良い日は好きな景色が続く海沿いを走りながらのんびり行こう。そんな選択ができるのも、心に余裕があるからこそなのだ。

3できることは自分でチャレンジ!がモットーの三浦さん。お店のロゴも自身でデザインを手がけたそう

ほんの少しの楽しみを地域の人に

3毎日の生活の中の、ほんの少しの楽しみを、とお菓子作りをしている三浦さん。メインとなるマカロンも着色料などで派手な色味にはせず「いらないものは入れない」ということを大切に、美味しくて体にも優しいものを心がけている。期間限定の味もあり、ほっと一息つきたい時に、大切な人に喜んで欲しい時に。これから松山の人たちに癒しを与えてくれるに違いない。

松山暮らしの本音を教えて!

Q 移住者へのアドバイスは?

大まかに街をみておけば、そのあとのリサーチはいくらでもできます。生活が描けるかどうかよりも、どう生活したいかを大切にした方が良いと思います。

Q お気に入りの場所は?

やはり海です。生まれ育った街も海には近かったのですが、ここ松山に移住するまでは釣りをしたことがなかったんです。こんなにハマるとは…という感じでした。

Q 松山に来て驚いたことは?

市内中心部から少し離れるだけで、こんなに風景が違うのかと驚きました。あとは不便などは全く感じていません。ここでの生活が豊かになったので、自分自身もポジティブに変化し、不便を不便と感じなくなっているのかもしれません。

三浦哲也さん、恵美子さん

子供が生まれたのをきっかけに移住を決意。国内外の有名パティスリーやカフェでの経験を生かし、2019年2月に「三浦菓子店」をJR北条駅前にオープン。夫婦二人でお店を切り盛りしている。

移住時の年代
30代
家族構成
夫婦と子供
移住スタイル
Iターン
移住時の年代
30代
家族構成
夫婦と子供
移住スタイル
Iターン