INTERVIEW百色移住インタビュー

ひとつの仕事を突き詰めていき、たどり着いた場所がここ松山だった

谷口 堅一郎さん

夢破れたのち出会ったジュエリーの世界

19歳の頃、音楽で生きていきたいとバンド仲間と地元である福井県から上京した谷口さん。けれども自分が考えていたほど甘くなかったことに気付き、1年ほどで福井に戻ることに。新たな夢を模索していく中で、手先が器用だったことや、ものづくりに興味があったことなどから、ジュエリー職人という仕事に興味が湧き、地元のジュエリーショップに就職することになった。社長と社長夫人、そして谷口さんという3人だけのショップで、職人としての技術を磨きながらありとあらゆる雑務をこなす日々。時には無謀なリクエストにもこたえながら、それなりに充実した日々を過ごしていたものの、もっと職人としての技術を磨きたいという気持ちがますます大きくなっていった。
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福井から再び東京へ

そんな時に遊びに行った東京で、ふと雑誌を開くとジュエリー会社の求人情報が。「なぜかとても惹かれるものを感じ、気付くと電話をかけていました」と谷口さん。面接ではいきなり実技試験が行われ、通常では数回行われるものも見事一度でクリア。晴れて入社することになった。そこからは毎日、職人としてジュエリーを作る、思い描いていた日々。そんな中でどんどん会社が大きくなるにつれて、 “つくる”というよりも指導する管理職としての立場に移行していく。「組織の中にいる以上は仕方がなかったのかもしれませんが、でもやっぱり自分は職人でありたかった」という思いから、13年勤めた会社を辞めて海外へ自分探しの旅に出ることに。その後東京へ戻り、宝飾店で時計の販売員として働き始めたそう。
「ジュエリー職人として働いていた頃から、お客様からの声をたまにいただくと、とても嬉しく報われる瞬間でもあったので、いつかは自分がデザインしたものを、自分で直接お客様にお渡しできるような店を持ちたいという思いは漠然とありました」と、そんな未来を見据えて接客を学ぶという目的も販売員経験にはあった。

松山に移住していた知り合いからの紹介

そんな折、13年勤めた会社の後輩であり、先に松山に移住していた知人の紹介で、松山のジュエリーの卸会社との出会いが。「一度松山に来てみれば?」と誘われ、すぐ松山に飛んだのが2015年の3月頃。四国自体ほぼ初上陸だったそうだが、滞在した2泊3日ではレンタカーを借りて自分の気持ちの赴くままに、松山市内はもちろんしまなみ海道の方まで足を伸ばした。自然の豊かさや街の規模感などに好印象を持った谷口さんは、すぐに松山への移住を決定。家族や元同僚、友達も気持ちよく送り出してくれたそうだ。そしてその1ヶ月後には引っ越しを完了させ、松山での生活が始まった。

松山に移住して、夢を叶えるまで

3それから4年。まずは仕事に慣れようと、仕事中心の生活だったため、「いまだにほとんど街のことは知らないんです」と笑うが、そんな限られた時間の中でも大好きなパン屋さん巡りをしたり、東京生活の時から趣味としてやっていたクラブDJとして、音楽を楽しんだりもしている。
そして、いつかはと思い描いていた自身のカスタムメイドのジュエリーショップ「here to stay」を、2020年6月に中の川通りの一角にオープンさせた。店名の由来は、自身が会社員時代に自分を奮い立たせるために聴いていた曲のタイトルであるとともに会社員時代に自分の実力を試すため、展示会に出品した際につけたブランド名。いつか夢を叶える時にはと、大切に温めてきた原点とも言える言葉だ。
4「大量生産されるものとは違うカスタムメイドジュエリーは、お客様の人生の大切な局面に求められるもの。そんな大切な場面に関われることが嬉しくもあり、責任の重大さも感じます。だからこそお客様の思いを大切に汲み上げ、その思いを形に。それが何十年も愛されるようなものになったらという気持ちで、作り上げています」という谷口さん。
5コロナ禍の大変な時期のスタートとなったが、それでも来店されるお客様には恵まれているとのこと。実は、プレオープンの日に来店された方が、松山市の職員で、その方が購入したジュエリーがこの店からお届けする最初の作品になったそう。以来お店のことなど、いろいろと相談にのってもらっているそうだ。「お店を始めたことで、また松山での生活も変化していきそう」という谷口さんは、これからに胸を躍らせている。

松山暮らしの本音を教えて!

Q 移住者へのアドバイスは?

美味しいお店もたくさんありますし、海にも山にも近く、自然も豊かです。首都圏へのアクセスも良く、必要な時にいつでも行けます。自分も昔は東京への憧れがあって上京したのですが、今は「都会じゃないとできない」ということは感じていません。

Q 松山に来て驚いたことは?

パン屋さんがとにかく多い気がします。自分はパンが好きなので、いろんな店を開拓してはお気に入りを探しています。

Q お気に入りの場所は?

今でも自分にとってなくてはならないのが音楽。先日移転オープンしたクラブバー「音溶」は、音楽好きの人たちにも出会えますし、自分も時々DJをさせてもらうことも。ここで交友関係が広がっている気がします。

谷口 堅一郎さん

1975年福井県福井市生まれ。ジュエリーデザイナー兼クラフトマン。福井や東京でジュエリー職人としての技術を磨いたのち、縁あって松山へ移住。2020年6月にデザインから製作まで一貫しておこなうジュエリーショップ「here to stay」をオープン。

移住時の年代
30代
家族構成
単身
移住スタイル
Iターン
移住時の年代
30代
家族構成
単身
移住スタイル
Iターン