INTERVIEW百色移住インタビュー

触れたくなるような建築を。ロンドンで学んだその意識を松山でも根付かせたい

山口暁さん

視野を広げるべく単身イギリスヘ

大洲市に生まれ育った山口さん。大分の大学に進学し建築を学ぶうちに、ひとりの人間として視野を広げたいと海外への留学を意識するようになり、イギリス・ロンドンに渡航。国立イースト・ロンドン大学の大学院課程に入学・卒業したのち現地で就職。最終的には、建築専門誌でも特集されるほどの実績を持つ会社、Carmody Groarke(カーモディー グローク)社で、様々な建築に携わることになった。ホテルや商業施設、住宅などのほか、美術館や博物館などアートに関わる施設にも携わるという経験の中で、空間アートにも興味を持つようになった。建築物をより身近に感じ、面白さを体感してもらえるように。そんな風に、「触れたくなるような建築」を目指し、帰国したのは2016年のことだった。
31_02Carmody Groarke社で携わった仕事には、あのABBAがメンバー全員で住んでいたという、有名な建物のリノベーションも
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次なる舞台に選んだのは東京ではなく愛媛

移住先の候補地は愛媛と東京。結果的に「東京からの発信は他の人に任せれば良い。自分の経験値を発信するのに地方からのほうが向いているのではないか。語弊を恐れずに言うならば、そのような文化途上にある場所のほうがその役割を果たせるのではないか」と思った。それから2年ほどは大洲の実家に身を寄せながら、日本での活動を模索していた。アート作品のデザインコンペなどにも積極的に応募し、「徳島LEDアートフェスティバル2016」では数ある公募作品の中から「光のなる木」がメイン作品に選ばれるなど、少しずつ活動の幅を広げていった。
31_04自身にとって初めてのアート作品になった「光のなる木」。風に揺れる構造物に使用する素材の強度や安全性などを検証しながら作品作りのすべてを一人で行った

地盤固めとコミュニティづくり

大学卒業後離れたため日本でのネットワークは皆無だった山口さん。人づてに知り合いを紹介してもらったり、自分からアプローチしたりと少しずつコミュニティを広げていく毎日。そして建築家としての仕事が軌道に乗り始め、打ち合わせなども増えたこともあり、2018年には松山市・三津浜に移住。祖父母が古三津に暮らしていたことからも、子供の頃から馴染み深かった場所を選び、商店街の空き店舗を事務所兼住居として借りていた。その場所が新しい店舗として使われることになり、2020年末には住居を松山市内に移転。それでもやはり三津浜との繋がりを持っていたいと模索していたところ、明治14年築で有形登録文化財としても指定されている「木村邸」の一角を借りられることになり、現在はそこを事務所として使用している。
31_05この3.6メートルの一枚板のテーブルが入り、なおかつこじんまりとした事務所を長く探していた。

地域に溶け込むということ

週末はイベントやカフェなどで使われることもある木村邸だが、「とても静かで仕事には集中できるスペース。けれど気にかけて前を通る時に声をかけてくれる地元のお年寄りの方々もいたりと、つかず離れずの環境が心地よいんです。三津浜は個性的な移住者の方も多い、とても興味深い場所なんです」と教えてくれた。
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というのも、山口さんは建築物という単体の側面だけでなく、まちづくりという観点から見ているからこそ。「ロンドンでは、景観というものをすごく重視します。例えば家を建てる人がいるとする。するとその通り全体を見て、どんなデザインでどんな素材を使った住宅が多いのか。それを尊重して、新築もデザインや素材を合わせるなど、全く異質な建物が作られることはありません。住む人たちの関心の高さと、その街に対する誇りがある。そんな風にこれからの松山に住む方たちの意識が高まっていくことを期待しています」。

繋がりから生まれた空間アート

そんな風に意識を高めていければという取り組みのひとつが、空間アートデザイン。木村邸と同じ三津浜地区にあるの正念寺では、新しいことへの理解があるご住職との出会いもあり、光と影の空間演出したイベントを行ったことも。
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また最近では木村邸で月に一度「Think Tank」というイベント名をつけて、自由で率直な意見交換ができる場所を提供している。今後も建築に関わる模型や空間デザインに触れられるワークショップを開催したり、建築以外の分野でも、表現や意見交換のできる場所にしていきたいと考えている。ロンドンで学んだ国際的な視野を武器に、これからのまちづくりに積極的に関わっていきたいとの夢を語ってくれた。

松山暮らしの本音を教えて

Q 松山に来て驚いたことは?

思った以上に他から来ている人(移住者)との繋がりが心地よいということ。出身が大洲と遠くないこともあり、全く違和感なく日本での生活に戻れました。そんな中で意識しているのは、自己主張しすぎないこと(笑)。長年の海外生活ではっきりと意見を言うクセがついてしまったので、そこはバランスを取るように心がけています。

Q お気に入りの場所は?

仕事の基盤、生活の基盤を作ることに精一杯でまだあまりプライベートでの楽しみは見つかっていません。でも三津浜の風景は、子供の頃から知っているということもあり、どこかホッとしますね。

Q 移住者へのアドバイスは?

移住してきた人と話してみるのが一番良いと思います。あとは同業者だとなおいいですよね。そこでの生活にリアリティが感じられるか、それが大事だと思います。

山口暁さん

建築家。大洲市生まれ、大学院よりイギリスに渡り8年ほどロンドンで建築を学ぶ。その期間にヨーロッパ各地の建築を見て回り見識を深め、2016年帰国。建築物の設計施工だけでなく、空間アートにも力を入れている。
https://akirayamaguchi.net

移住時の年代
30代
家族構成
単身
移住スタイル
Jターン
移住時の年代
30代
家族構成
単身
移住スタイル
Jターン