INTERVIEW百色移住インタビュー

好きだから楽しく頑張れる 松山で起業したふたりのリアルライフ

佐々木 風帆さん(ICOI COFFEE)、大澤 大希さん(プロッツ愛媛factory)

生まれも育ちも埼玉県の大澤さんは、約3年前に松山に移住されました。また、佐々木さんが生まれ育ったのは西予市、大学進学を機に山梨県へ引っ越し、卒業後、Jターンで松山に。大澤さんは釣り道具のルアービルダー(※)として、佐々木さんはICOI COFFEEのオーナーとして、お二人とも松山を拠点に「好き」なことで起業されています。松山を移住先に選んだ理由や起業するまでの経緯、さらに実際に暮らしてみての感想などをお話しいただきました。

※魚釣りに使うエサの代わりのルアーを作る人

自然と沸き起こってきたここで暮らしたいなという素直な気持ち

大澤さん:友人として付き合っているので、改めてこんな風に話すのは照れますね。今日はよろしくお願いします。

佐々木さん:本当にそうですね。よろしくお願いします。大澤さんは、松山に移住されてどのくらい経ちましたか?

大澤さん3年かな。引っ越してきたきっかけは、その半年くらい前に松山に住んでいる友達を訪ねていて、その時の印象が「一年中温かくて暮らしやすそうだな」って思ったことです。趣味の釣りをした時に、魚が素直でスレていなくて好感が持てたんです。僕の場合は、ダムなどのリザーバー(人工の池)で釣りをするのですが、関東のフィールドというかダムの作りが違う感じで、関東と四国のフィールドの違いを攻略するのって面白そうだなって思ったんです。最初はルアービルダーとしてやっていこうとは思ってなかったのですが、仕事をしながらルアーを作れたらいいなって思っていました。

美大を卒業し、舞台芸術の仕事をしていて、中堅になって自分じゃなくても成立する仕事を任されていて、もう少し自分らしい生き方がしたいって思っていた時に松山に出会ったんです。それで、関東での生活を変えたくて、なんとなく移住を決めた感じです。佐々木くんは松山に来てどのくらいになりますか?
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佐々木さん:僕は4年になりますね。西予市で生まれ育って、大学で山梨に進学して、卒業したら愛媛に帰りたいなっていう気持ちはありました。大学の時に三津浜に遊びに来たことがあって、愛媛なら三津浜が面白いんじゃないかって思っていて。とはいえ、仕事はしなくてはいけないので、三津浜商店街にあるカフェの『田中戸』さんに「卒業したら働かせてもらえないですか?」って電話をしたら「いいよ」って。あっさりですけど、それが決め手で三津浜に引っ越すことにしました。

大澤さん:僕もなんとなく移住して来たけど、佐々木くんもあっさり三津浜に決めて移住して来たんですね。

起業は縁が大切! 人との繋がりでトントン拍子・・・?

佐々木さん:そうですね(笑)。大澤さんは、はじめはルアービルダーとしてやっていくとは考えてなかったとのことでしたが、いつ頃からルアービルダーとしてやっていこうと決めたんですか?

大澤さん:ルアーは、こっちに移住してからすぐに作り始めていて、最初に作ったルアーで試しに釣りに行った時、一投目で釣れたんです。「これはもう運命だな」って。そのモデルをブラッシュアップさせて、SNSに投稿したら「欲しい」っていう人が出てきて、お客さんができてきた感じ。ちょっと手応えを感じて、大阪で釣りのイベントがあったからルアーを頑張って40個作って持って行ったら、5個くらいしか売れなくて・・・。「やっぱり厳しいよな・・・」って落ち込んで帰ってきたら、あるショップから「店に置きたいから卸してほしい」って声が掛かったんです。

それでちょっとずつ作り始めたけど、どこかの会社に勤めながらルアーも作って、というのはどっちつかずになる気がして、会社に勤めるんじゃなくてアルバイトをしながら、ルアーを作る生活をスタートさせました。去年くらいからアルバイトをせずに100%ルアービルダーとして生計が立てられるようになった感じですね。佐々木くんは?どんな経緯でコーヒースタンド始めたんですか?

佐々木さん:コーヒーはもともと好きで、大学生の頃からコーヒー豆を焙煎して販売していたのですが、いつかは突き詰めて生業にしたいと思っていました。『田中戸』でのアルバイトを卒業した後に、『松山Q』という三津浜のイベントにお声がけいただきました。コーヒーの販売で参加していたんですけど、そこでイタリアンレストラン『リトルイタリアFLOR』のマスターと出会ったんです。そしたら「店の下が空いているからコーヒー屋やらない?」って声をかけてもらって、次の日からとりあえず店をオープンさせた感じです(笑)。
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意外とすんなりと進んだ起業 でも、そこからが勝負!

大澤さん:すごいスピード感!三津浜商店街の皆さんってよそからきた人に、「なんとか良くなってほしい」っていう気持ちが強いよね。佐々木くんは、敷金・礼金無しから始められたのがいいよね。

佐々木さん:本当に感謝しかないです。

大澤さん:それにしても松山って、家賃が本当に安いですよね。僕の場合は、工房兼自宅だから広い部屋が借りられるのは、すごく助かっています。お互い、なんだか気がついたら起業していたって感じだけど、起業するのに大変なことってありましたか?

佐々木さん:全然なかったです。税金のことはネットで検索すれば分かるし、保健所の営業許可のことはありましたけど、それは普通のことなので。一昨年に『リトルイタリアFLOR』の1階から卒業して、今の場所にお店をグランドオープンさせたんですけど、その時も、大工仕事ができる人に助けてもらって、廃材を使い、知恵を借りながら、三津浜の皆さんに助けてもらってお店を作りました。

大澤さん:僕の場合は、別の意味で松山に感謝していて、ダムが近いからすぐにルアーのテストに行けるし、こっちの素直な魚と関東のシビアな魚を比較しながらルアーを試したりできるんですよね。で、お客さんの反応を見ながらブラッシュアップする感じ。関東だと釣り禁止のダムも多いけど、こっちのダムでは釣りはOKで、しかも気候がいいから一年中やろうと思ったら釣りができる。

佐々木さん:冬でも釣りをするんですか?

大澤さん:もちろん寒いから、釣りをしている人は少ないけど、その時期にしか使えないルアーもあって、冬にしかできない釣り方もあるし、それに合わせてルアーを開発していくのが面白いんですよね。

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佐々木さん:ストイックですね。

大澤さん:好きだからできる、苦労というか努力ではありますね(笑)。

佐々木さん:確かに。僕もお店ができて、これからだなって思うことが多くて。自分たちのお店のスタイルや提供するサービスはもうちょっと頑張りたいなってところがあります。その「頑張る」をお客さんが求めるものにアジャストしていくのか、それとも自分たちのカラーを出して尖らせていくのか・・・。どっちで頑張っていくのかは時間をかけなくては分からないと思っていて、まだ2年だから、その部分を常に考えています。ビジネス云々言えるのはそれからかな、と。

大澤さん:まさにその通りですよね。全国的に広く受け入れられるものを作るのか、地元に合ったものを作るのか、自分のカラーを前面に出していくのか、その塩梅が大事で、そのさじ加減が見えている人が成功するのかなって、僕も思っています。

温暖な気候と人の良さ スーパーが多くコンビニ感覚の便利さが魅力

大澤さん:ところで、松山の暮らしはどうですか?

佐々木さん:まず、人が優しい。あとは、僕は西予市で生まれ育っていて、山梨にいた時も比較的のどかな場所に住んでいたので都会で暮らしたことはないんですけど、松山って人の多さや街のサイズ感がちょうどいいですよね。松山は車必須の街ってみなさん思われているかもしれませんが、車がなくても全然、生活できますよ。まあ、僕と妻は三津浜にばかりいるからかもしれませんが。電車もありますし。
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大澤さん:確かに。おじいちゃん、おばあちゃんが歩いて生活できるようなシステムが整っているのが松山な感じがする。あと、スーパーが多いのがすごく便利。実家の埼玉より多いんじゃないかなって思っています。都会だと駅近にでっかいスーパーがあって、住宅街にはスーパーがない感じだけど、松山ってコンビニ感覚でスーパーがある気がするのは僕だけ?(笑)。

佐々木さん:確かにスーパー多いです(笑)。

大澤さん:あと、さっきも話したけど、気候もいいですよね。一年中、温暖だし。母親の実家が青森だから、青森で1年間暮らしたことがあるのですが、冬は寒くて、寒くて、雪はすごいし、何もする気にならなくて・・・。こっちだと、寒いけど冬でも釣りができるから。趣味も含めて、自分のライフスタイルに合う気候ってあるなと思います。

自分が出来る範囲で 松山に貢献していきたい

佐々木さん:これからどうしていきたいとかあるんですか?

大澤さん:松山に貢献できたらいいなっていう想いがあります。ふるさと納税の返礼品でもルアーを取り上げてもらったりしているから。自分でできることから少しずつなんだけど、釣り場のゴミ拾いとか、松山の自然を大事にしていくような活動ができるといいな・・・と。佐々木くんは?

佐々木さん:僕はこの仕事をチームでやりたいっていう目標があります。理想としては焙煎場が欲しくて、焙煎場とコーヒーが飲めるスタイルが理想です。僕はずっと焙煎をしていたいので、バリスタが欲しいなって思っています。どちらも突き詰めていく仕事なので、二つ同時にするのは、なかなか難しいんです。コーヒーを仕事にしたいっていう若い子が結構多くて、そういう人たちにちゃんとした仕事だよって見せてあげられるといいなって思っています。

大澤さん:目標は大きく!自分のしていることが人の道しるべになるっていいですよね。

佐々木さん:大澤さんは、松山どころか愛媛にも四国にも縁があったわけじゃないと思うんですけど、移住してきてよかったですか?

大澤さん:もちろん。僕は一度、自分のしていたことをリセットさせて、本当にゼロからの気持ちで移住してきたから。松山に遊びに来た時に、「ここで暮らしてみたいな」っていう、初めの直感を信じて移住してきてよかったっていう気持ちが強いです。

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おふたりの愛媛の/松山での暮らしのようす

【大澤さんの暮らしの様子】

36_7ダムで趣味の釣りや作成したルアーのテストをします。愛媛は一年中釣りができて、しかもダムが多いのでリザーバーで釣りをする人にとっては最高の環境です。

【佐々木さんの暮らしの様子】

36_8店で提供・販売するコーヒーの焙煎を行なっています。測定データをPCのテキストファイルに書き出しながら焙煎管理を行なっています。

佐々木 風帆さん(ICOI COFFEE)、大澤 大希さん(プロッツ愛媛factory)