移住者インタビュー
INTERVIEW百色移住インタビュー
自分らしく、道後に湧く湯のように温かく、観光客をおもてなし
道後温泉本館から歩いてすぐ、昭和の面影を残す通り沿いにある「シナモンゲストハウス道後」。オーナーの後藤慎平さんは、東京やニュージーランドのゲストハウスで料理人として勤務した経験を生かし、2015年松山市の人気観光地・道後温泉街で開業した。
アットホームな環境で、自分らしく、自由に働きたい
東京都出身の慎平さんの転機は東日本大震災だった。 勤めていた東京のゲストハウスが被災し、転職を余儀なくされた慎平さんは、新しい仕事に就く前にワーキングホリデー制度を利用してニュージーランドへ渡った。半年間、現地のゲストハウスで働き、そこで松山市出身の彩香さんと出会った。
その後帰国し、予定通り名古屋の会社に勤めたものの、ほどなくして退職。理由は「時間にしばられる働き方が向いていない、自分で自分をマネジメントするほうが性に合っている」と感じたことと、「ゲストハウスがやりたかった」からだという。見知らぬ人たちが交流する、ゲストハウスのアットホームな雰囲気が慎平さんは大好きだったのだ。
道後との縁は、2013年に結婚した妻の彩香さんが紡いだ。
かわいくて人がやさしく住みやすい街、松山・道後に手作りのゲストハウス
彩香さんの誘いではじめて訪れた松山の印象は「かわいい街」。かわいい路面電車が走り、ギュッとコンパクトにまとまっている。自分がガリバーになったように「看板の位置が低く見えた」というのは、大都会のサインを見慣れた慎平さんならではの感想だろう。
松山の人の良さも心に残り、「コンビニの店員さんの態度も気持ちがよかった」と振り返る。
東京に数あるゲストハウスと競争する気は持てなかったが、松山でならと思えたという。
さらに移住を後押ししてくれる妻の実家の存在も大きかった。「素直に、援助の手は何でもありがたくいただきました」と笑う慎平さんは、彩香さんの実家のツテで築60年の宿を購入。デザインは家族みんなで話し合いながら決め、義父と知り合いの業者が約4ヶ月かけて改築した。「ボロボロだった」という建物は、おしゃれでかわいく、そしてどこの国の人もほっとするような空間に生まれ変わった。ちなみに「シナモン」の名は、慎平さんの犬アレルギーを治してくれた、妻の実家の飼い犬からもらったそうだ。
田舎のようで、田舎じゃない松山の魅力
宿泊客はお遍路さんが多い。「海外にも巡礼の文化があるので、外国人お遍路さんも多いですね」と話す慎平さんは、流暢な英語でさまざまな情報を提供する。明るい人柄と親切な対応が評判をよび、今では国内外の観光客から高い評価を得ている。
チェックアウトが一段落し、館内の清掃が終わると自由に出かけられる慎平さんのフリータイムだ。料理人の慎平さんにとって、松山は食材の宝庫。「移住したとき、スーパーで魚がまるごと一匹売られていて驚きました。魚も野菜も新鮮でおいしく、しかも安い!東京の両親が遊びに来たときは、必ず買い物をしてから飛行機で帰ります」と慎平さん。松山空港にはLCCが就航しているので、実家との往来もリーズナブルで「とても便利」だという。さらに「松山は、田舎だけど、田舎じゃなかった。カフェや雑貨などおしゃれな専門店も多くなってきていますし、これからも増えていくと思います」と今後の発展にも期待している。
伝統の祭りで道後の住人になったと実感
ゲストハウスは一家の住居も兼ねている。
「道後は楽しいイベントが頻繁にあります。今年の冬は、【道後アート2023】プログラムの1つ“ひかりの実”に小学生の長女が参加しました」
幼稚園や保育園などの待機もなく、医療費が高校まで無料とあって、「とても子育てしやすい」と満足そうだ。
「松山は街なかに温泉が多く、時々くつろぎにいっています」とにこやかに語る慎平さん。実は川柳を作るのが好きで、銭湯で公募している温泉マナー川柳や禁煙川柳などに何度も入選している腕前だ。近所には松山市立子規記念博物館があり、誰もが気軽に投句できる「俳句ポスト」も街のあちこちで見かける。「松山は俳句という文化が身近にある」と感じているそうだ。
毎年秋には、松山地方祭が行われる。道後では、駅前に8つの地域の大神輿が集まり賑わう。慎平さんは、2023年秋に初めて地方祭に参加し、地元の湯之町大神輿の運行に携わった。「想像以上の迫力でとても楽しかったです」と振り返る。そして「やっと、道後の一員になれたかな」と照れくさそうに笑った。
松山暮らしの本音を教えて
Q お気に入りの場所は?
鹿島、道後公園、子規記念博物館がお気に入りです。特に近所の子規記念博物館にはよく出かけます。館内をぐるりと巡って、外に出たときには2〜3句浮かんでいますよ。
Q びっくりしたことは?
海がきれいなことにびっくりしました。釣りが趣味なので、きれいな海が近くにあって良かったと思います。魚がおいしくて、とても安いことにも驚きました。
Q 移住者へのアドバイスは?
インバウンド向けの事業を考えている方へ。松山はお遍路さんや、広島から移動してくる旅行者など、今後もインバウンド需要が見込めると思うのでおすすめです。
後藤慎平さん
東京都板橋区出身。松山市出身の妻・彩香さんと小学1年生の長女と3人暮らし。会社勤務を経て、2015年に松山市へ移住。かねてからの夢だったゲストハウスを一大観光地の道後で開業。得意の語学を生かしたおもてなしで、海外からの宿泊客にも人気。
- 移住時の年代
- 30代
- 家族構成
- 夫婦と子供
- 移住スタイル
- Uターン
- 移住時の年代
- 30代
- 家族構成
- 夫婦と子供
- 移住スタイル
- Uターン