INTERVIEW百色移住インタビュー

松山で叶えた、家族との時間を優先したゆとりある生活

川井隆洋さん・奈津子さん

ライフスタイルを大切にするための独立

広島で約20年間、飲食の仕事に携わってきた川井さんご夫婦。カフェから和食まで、さまざまな業態を経験してきた。飲食業に携わると避けて通れないのが夜の勤務。夫婦ともに40歳前後の節目を迎えたとき、不規則な生活から日中のリズムに切り替えたいという想いが募り、独立を決意。「コーヒーが好きというのもありますが、日中だけの業態ならカフェがいちばん合っていると思って」と隆洋さん。

隆洋さんは宇和島市出身、高校時代は松山で過ごした。奈津子さんの地元である山口県からは少し遠くなるが、隆洋さんの地元に近い松山を選ぶことに躊躇はなかったという。「移住前に店の物件を決めるため来松。この場所に決めたのは、病院や学校が近く、人の往来も多いエリアで、コーヒー文化も根付いていると感じて」。広島に比べ人口規模が小さいことへの不安はあったが、それ以上に自分たちの望むライフスタイルに近づける期待が大きかった。「休みの日は、広島から連れてきた愛犬の八朔と自然に触れ合えるスポットに出かけたり、気になるお店に食事に行ったり。充実した時間を過ごせています」。唯一困ったというのが住まい探し。店の近くで希望の広さとペット入居可を満たす物件は少なく、移住準備のなかで最も苦労したという。

無事に住まいも見つけ、2025年2月に開業したのがカフェ「DAGWOOD」。八朔くんを看板犬に、夫婦ふたりで切り盛りしている。「八朔といつも一緒にいられるのが本当にうれしい。以前はお留守番で寂しい思いをさせていましたから。店内の一部をペット同伴可にしていて、お客さまにも喜ばれています」。店内までワンコと同伴できる店は松山でもまだ少ないため、重宝されている。

店を起点に人の輪が広がっていく、ほどよい距離感

隆洋さんにとっては約20年ぶりの松山。高校時代は部活動に明け暮れて街を知る機会は少なかったため、新鮮な発見が多いという。「個性的なスーパーがたくさんありますよね。魚がおいしい店、野菜が新鮮な店など、用途で使い分けられて買い物も楽しいです。それから、温泉が身近にあるのも魅力。朝早くから営業しているところも多くて。私たちのお気に入りは、たかのこの湯です」。また、地域の生産者と直接つながれるのも愛媛・松山ならではと話す。「農家さんがお客さまとして来られて、そのまま食材を仕入れさせてもらうことも。広島では間に業者を挟むことが多かったけれど、ここではダイレクトにつながれるのがいいですね」。

「移住について話したとき、山口の祖母は遠くなるねと寂しがっていました。でも家族はもちろん、広島の友人や元職場の人たちが訪ねてきてくれることも意外と多くて。愛媛のスポットを一緒に巡って旅行気分を味わっています」と奈津子さん。かつてのつながりも距離を越えて続いていて、むしろ絆は深まっているという。

これからも、誰でも気兼ねなく立ち寄れる場所でありたい

 店の雰囲気は、誰もが思い思いに過ごせる公園のように自由な空間を目指している。実際に来店するのは、赤ちゃん連れや90代のおじいちゃん、ワンコ連れまで幅広い。「誰もが気軽に立ち寄って、それぞれの時間を過ごせる場所にしたいと思っています。公園のベンチに座るみたいに、自然に集まってくれるとうれしいです」。また、店名「DAGWOOD(ダグウッド)」は、夫婦ともに大ファンだという伊丹十三氏のエッセイからの引用。ユーモラスで親しみやすい響きが店の空気にも重なる。

今後について尋ねると「店舗を大きくしたり多店舗展開するより、今の規模のまま深く愛されるお店にしていきたい」とおふたり。目の前にある空間をより良くしていくことに重きを置き、愛犬とともに過ごす毎日は、広島時代には得られなかった自由と心地よさに満ちている。松山のちょうど良いスケール感のなかで、人とのつながりを重ねながら、「DAGWOOD」はこれからも地域に根ざしたカフェとして育っていく。
来への希望がにじむ。おふたりの取り組みが、松山の暮らしに新しい彩りと活気をもたらしてくれるはず。

松山暮らしの本音を教えて

Q 松山を選んだわけは?

地元・宇和島に近く、比較的人口の多いところを選びたかったので。 店名の由来でもある、大好きな伊丹十三さんゆかりの地であることもきっかけになりました。(隆洋さん)

Q 松山のお気に入りの場所・休日の過ごし方は?

「伊丹十三記念館」と、温泉では「たかのこの湯」「水晶湯」がお気に入りです。 「松山総合公園」や「マテラの森」など、ワンコ連れでお出かけできるスポットにもよく行きます。(奈津子さん)

Q 移住を検討している人たちへのアドバイスは?

松山はコンパクトシティで過ごしやすい街。悩んでいる人がいたら、気にせず来てみたら良いと伝えたいです。地域のつながりの中で、新しいおもしろいことをしている人も多いと感じます。(隆洋さん)

川井隆洋さん・奈津子さん

隆洋さんは愛媛県宇和島市出身、奈津子さんは山口県出身。夫婦ともに飲食業での経験を経て、2025年2月に松山でカフェをオープン。愛犬とともに、夫婦ふたりで店を切り盛りしている。

移住時の年代
40代
家族構成
夫婦
移住スタイル
Uターン
移住時の年代
40代
家族構成
夫婦
移住スタイル
Uターン