移住者インタビュー
INTERVIEW百色移住インタビュー

縁を力に、松山の暮らしが育んだ開業への挑戦
松山で見つけた“ちょうどいい”暮らし
幼少期から空手に打ち込んできたご主人の哲也さん。大学4年時に、「3年後にえひめ国体があるから」と声を掛けられ、招待選手として松山へ。愛媛県競技力向上対策本部に所属しながら松山での生活をスタート。競技選手としての力を磨きながら松山工業広告の空手道部コーチも務めた。その後、結婚を機に奥さまの順子さんも松山へ。
「実は松山に縁はほとんどなかったんです。大学卒業後は広島で教員になるつもりでしたが、その道にも未練はあまりなくて。むしろ当時付き合っていた妻との遠距離のほうが気がかりでした(笑)」と、哲也さんは振り返る。順子さんも「不安や寂しさというよりは、新しい土地で生活を整えながら仕事を覚えることに必死でした」と当時を語ってくれた。
暮らし始めてみると、その心地良さは想像以上だったそう。「一度も広島に帰りたいと思ったことがないんです。暮らしやすいし、人がすごく良い。なんか“ちょうどいい”んですよね。何も困ること
がなくて」と哲也さん。その環境の良さもあり、現在は自宅で空手道場「Honda KARATE Club」を開き、子どもから大人まで幅広く指導している。順子さんも当初は道場を手伝っていたものの、育児に慣れ、自分の時間を持てるようになった頃から、趣味だったベーグル作りを本格的に始めたいと思うようになり、2025年5月に念願の店「KIJIUMA BAGEL」をオープンさせた。
「松山は自然や街、生活に必要なものがぎゅっと近くにそろっていて、車があればすべて完結できる。自分にはすごく合っていると感じます」。さらに、ベーグル店を始めてから愛媛・松山ならではの魅力も再発見できたそう。「ベーグルの食材選びをするなかで生産者さんと直接つながれることも多く、その距離感がすごく好きです。地元の人には当たり前でも、実はすごく価値のあるものなんだと気づかされることもあります」。
地域との関わり方について、ご夫婦の口から繰り返される“心地よさ”。そこから、松山の人のあたたかさや、心のゆとりが感じられるよう。
松山で育む、子育てと空手への新しい視点
広島で子育てをしていないので比較は難しいものの、子育ての環境も十分に整っていると感じているという。「第一子を出産したばかりのとき、身寄りがいない中での子育てはなかなか大変でした。でも、そのとき支えになったのが子育て支援センターの存在です。大人が自分以外にいてくれる環境は本当にありがたくて、先生のことも大好きに。私も子どもも、とても過ごしやすかったです」。
また、松山での人とのつながりやすさにも助けられたそう。 「『これを買いたい』と話すと、誰かしらが『それ知ってるよ』と教えてくれる。知り合いの知り合い、というように縁がすぐに広がっていくんです。最初は“よそ者と思われるのでは”と心配でしたが、実際は『広島出身なんだ、広島っていいよね』と、むしろ受け入れてくれる。そういう懐の深さがあると感じます」。
哲也さんにとっても、愛媛の人のあたたかさは大きな力となったそう。「国体では県外から多くの招待選手が来ますが、終わればそこで区切りになることも多いと聞きます。その点、愛媛は違いました。引退後もコーチや監督として声をかけてもらい、『次は頼むぞ』と期待していただける。ありがたかったですね」。また、広島にいたころは、道場を開くことは考えていなかったという。
「教員の道に進んで高校の部活を指導してインターハイを目指す、そんな関わり方を想像していました。でも愛媛でコーチや外部監督として生徒と向き合ううちに、“もっとまだ空手に触れていない子たちに、この競技を通じて人生を豊かにしてほしい”と思うようになったんです」。空手道場を開くという道は、国体や地域の人との出会いがあったからこそ生まれた選択肢だったといえるだろう。
それぞれの道で、松山の魅力を届ける
哲也さんは、日本代表として活躍した経験をもとに「愛媛から世界へ」という想いを胸に道場で指導。「技術の底上げはもちろんですが、それだけでなく、人間性や社会性といった内面も育てていきたい」と語る。
一方、順子さんは「ベーグルを通して、愛媛・松山の良さをもっと知ってもらいたい」とニコリ。県外から移住したからこそ気づいた“当たり前”の違いを強みに変え、「例えばミカン。地元の人にとっては普通かもしれないけれど、実はすごくおいしいんです。そんな魅力をもっと多くの人に伝えたい」と話してくれた。
県外で生まれ育ったからこそ見える松山の魅力を、自らの事業を通じて発信していきたいと語るご夫婦。そのまなざしには、この地への愛情と未来への希望がにじむ。おふたりの取り組みが、松山の暮らしに新しい彩りと活気をもたらしてくれるはず。
松山暮らしの本音を教えて
Q 松山を選んだわけは?
2017年のえひめ国体で空手の招待選手として呼んでいただいたことがきっかけ。その後も空手を通してさまざまな縁があり、松山で暮らすことになりました。(哲也さん)
Q 松山のお気に入りの場所・休日の過ごし方は?
親水公園「杖ノ淵公園」は夏場でも過ごしやすいのでお気に入り。休日は自宅の空手道場で稽古をしています。(順子さん)
Q 移住を検討している人たちへのアドバイスは?
何も身構えなくて大丈夫です。僕たち自身がそうでした。たとえば住居の選び方に関しても、直観を大切にしたんですよ。「港に住みたい」とか「職場からは離れた場所にしよう」とか。松山市内でもいろんなエリアに引越しをしましたが、どこもとても住みやすかったです。生活しやすいですよ。(哲也さん)

本田哲也さん・順子さん
広島県出身。哲也さんはえひめ国体の招待選手となり松山へ。その後、結婚を機に順子さんも移住。現在は、それぞれが空手道場とベーグル店を構え、二人のお子さんとともに暮らしている。
- 移住時の年代
- 20代
- 家族構成
- 夫婦と子供
- 移住スタイル
- Iターン
- 移住時の年代
- 20代
- 家族構成
- 夫婦と子供
- 移住スタイル
- Iターン