INTERVIEW百色移住インタビュー

家業継承のために松山へ 新しい事業に挑戦

山之内 圭太さん

アパレル×クラフトビール
今までになかったコラボレーション

松山市中心部にあるアパレルショップ「DD4D」。セレクトした洋服や雑貨が並ぶ店内の奥には、ステンレスの大きなタンクが連なるクラフトビールの醸造所がある。代表の山之内さんは、県外や海外で10年以上暮らした後、家業を継ぐために松山に戻ったUターン移住者だ。「アパレル業を営んでいた父が病気を患ったのが帰郷のきっかけです。今後はアパレル業だけでは立ち行かなくなるだろうという予想もあり、せっかくなら家業を継ぐだけじゃなく、自分のやりたいことも形にしようと思いました」と、クラフトビール製造に至った理由を語る。

当初は工場用の物件を探していたが、DD4Dは街中のアパレルの店としては店舗が広いこともあり、「思い切って半分をクラフトビールの製造工場にしてしまおう」というアイデアが浮かんだという。帰郷後すぐに、家業とは別に自身の資本金で新会社を設立。「親の会社の資金に頼らず、あくまで自分のリスクで新事業に挑戦したい」という覚悟のもと、醸造所をつくる決断をした。

ゼロからの挑戦と新しい暮らしのはじまり

東京・海外でのクラフトビールづくりの経験はあったものの、スタート時はビール開発、販路づくりやPRまでひとりで担い、すべてが手探り。「朝から夜遅くまでほぼ休みなし。事務所で寝泊まりしながら、営業・仕込み・配達・経理、全部自分でやっていました」。軌道に乗るまでの約2年は、がむしゃらに働いたという。

松山で事業をする上で、まず初めにメリットを感じたのは、事業コストの低さ。「2021年から稼働している三津の醸造工場は約100坪ありますが、東京でその規模の工場を持つとなると、かなりの家賃がかかります。一方で松山は比較的始めやすい価格帯でした。ほかにも、松山の飲食店は昼のみ・夜のみ営業の店も多いですよね。がんばりすぎなくても何とかなる、ということだと思います」。また、移動のしやすさも魅力のひとつ。「市街地なら自転車で行き来ができ、さらに車があれば自由にどこへでも行ける。コンパクトな松山の街は、改めて住みやすいなと感じ、事業をする上でも不便を感じることはありませんでした」。


最初は苦労の連続だったものの、やがて共感してくれるすばらしい仲間が集まり始める。今では国内外から集まった精鋭たちがチームとなり、醸造や商品デザイン、イベント企画など、多くの業務を担ってくれる存在になった。「今のメンバーなら、松山じゃなくても、地球上のどこでもやれると思います。最高のチームです」と山之内さん。全国のイベントにも積極的に出店し、毎週のように松山ではないどこかに出向いているという。その地道な働きかけで、47都道府県のほぼすべてでDD4Dの商品を扱う店ができ、ファンを増やす足がかりになっている。数年前から海外輸出や海外企業とのコラボレーションも始まり、最近では松山市の姉妹都市であるアメリカ・サクラメント市のブルワリーと一緒に仕込むプロジェクトも進行中だ。

「松山は魚もごはんもおいしいし、空港から近いので県外の友人も呼びやすい。DD4Dのビールを目当てに、国内では北海道や沖縄からもいらっしゃいますし、海外なら台湾、オーストラリア、アメリカなどから来られた方もいますよ」。空港と市街地はそう遠くないため、遠方からやってくる人も少なくないと話してくれた。

好きなことに一直線
そんな人と未来をつくりたい

すばらしい仲間に恵まれ、毎週のように国内を飛び回っている山之内さん。自身と同じように好きなことに向かっている人の背中を押していきたいと話す。「せっかく平和な日本に生まれたのだから、自分を抑えずに好きなことをやってほしい。人生は意外と短くて有限ですから。エネルギッシュに自分を開放するからこそ、おもしろいことや新しいことが生まれます。これから新しいことに挑戦する人を応援していきたいです」。旅するように各地を回る山之内さんのライフワークは、今後も全国や海外でもファンを増やしていくだろう。「まだまだDD4Dは大きくなる可能性があります。松山で根を張りながら、ここに来るとおもしろいことがある、という拠点をつくっていきたいです」。とキラキラした目で語ってくれた。

山之内さんが目指すのは、単なるビール醸造所ではなく、カルチャーやコミュニティが生まれる場。仲間と一緒に楽しみながら挑戦を続けるその姿は、移住して新しい生き方を探す人にとっても、大きなヒントになりそうだ。

松山暮らしの本音を教えて

Q 松山を選んだわけは?

現在も東京のAI系スタートアップ企業に勤める妻の理解と協力もあり、家業を手伝うために地元の松山に帰郷しました。

Q 松山のお気に入りの場所・休日の過ごし方は?

温泉が好きで、シーパの湯のオーシャンビュー風呂がお気に入り。飲食店なら、DD4Dのビールも飲めるBOKKEで過ごすことが多いです。温泉もビールも楽しめる、東道後のそらともりもよく利用します。

Q 移住を検討している人たちへのアドバイスは?

松山の人は都会に比べてのんびり気質だけど、時間にはきっちりしている印象。まじめな方が多いです。がんばる人を応援したり手伝ってくれたりする文化があるので、挑戦する人は臆することなく飛び込んできてほしいです。

山之内 圭太さん

松山市出身。県外への進学、メーカー勤務を経て、2016年よりクラフトビール製造企業で製造・店舗運営に携わる。2019年に帰郷、松山でのクラフトビール製造をスタートし、家業のアパレル業を一部引き継いだ。

移住時の年代
20代
家族構成
夫婦と子供
移住スタイル
Uターン
移住時の年代
20代
家族構成
夫婦と子供
移住スタイル
Uターン